シミの種類と治療法を皮膚科専門医がやさしく解説
はじめに
「最近、ファンデーションで隠しきれないシミが増えてきた」「この頬のくすみって肝斑?」——年齢を重ねるにつれて、鏡を見るたびにシミが気になるという方は少なくありません。
シミと一口に言っても、実はいくつかの種類があり、種類によって原因も治療法もまったく異なります[1]。間違った治療を受けるとかえって悪化することもあるため、まずは「自分のシミがどのタイプなのか」を知ることがとても大切です。
シミの種類を知ろう
シミ(色素斑)にはいくつかの種類がありますが、皮膚科で多くみるのは以下の5つです[1][3]。
①老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)(日光黒子)

もっとも一般的な「シミ」です。紫外線によるダメージの蓄積が原因で、顔や手の甲、腕など日光に当たる部位にできます。境界が比較的くっきりしていて、丸い形をしているのが特徴です[14][15]。「老人性」という名前ですが、20代後半から目立ち始めることも珍しくありません。最近の研究では、紫外線だけでなく脂質代謝の乱れやミトコンドリア機能の低下も関与していることが報告されています[14]。
②肝斑(かんぱん)

30〜50代の女性に多く、両頬にぼんやりと左右対称に広がる薄茶色のくすみです[2][3]。額やあごに出ることもあります。境界がはっきりしないのが老人性色素斑との違いです。
病態は単純ではなく、紫外線だけでなく、女性ホルモンの変動、酸化ストレス、甲状腺機能、心理的ストレス、可視光(紫外線以外の太陽光)、大気汚染、スキンケアによる摩擦、特定の薬剤など、複数の因子が絡み合って起こると考えられています[3][4]。表皮の色素細胞だけでなく、基底膜の傷み、真皮の血管の増加、肥満細胞の活性化なども関与する複雑な病態です[3]。
肝斑の最大の注意点は、レーザーの種類や強さによっては治療でかえって悪化することです[2]。「シミ=レーザーで消す」と思い込んでいると、濃くなってしまうことがあるため、まずは皮膚科での正確な診断が重要です。
③雀卵斑(じゃくらんはん)(そばかす)

遺伝的な要因が大きく、両親や兄弟にも同じような症状があることが多いです[15]。子どもの頃から頬や鼻を中心に小さな茶色い点々がぱらぱらと見られます。紫外線で濃くなりやすいですが、加齢とともに薄くなることもあります。
④炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく)(PIH)

ニキビ跡、やけど跡、虫刺され跡、レーザー治療の後などに残るくすんだ茶色いシミです[1][16]。炎症が治まった後にメラニン色素が沈着して起こります。通常は数ヶ月〜1年程度で自然に薄くなりますが、紫外線を浴びると長引くことがあります[16][18]。
⑤ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

本来は真皮には存在しないはずのメラノサイト(色素を作る細胞)が、何らかの原因で真皮に居着いてしまい、色素を作り続けることで起こる青みがかった褐色の斑です[12]。両頬骨や額、鼻の脇に左右対称に出やすく、20〜40代のアジア人女性に多く見られます。肝斑と似て見えるため誤診されやすいですが、メラニンの存在する深さが違うため、外用薬や内服薬では効きにくく、レーザー治療(特にピコ秒レーザー)が中心となります[12][13]。
シミの治療法
シミの種類ごとに、効果的な治療法が大きく異なります。まずは正しい診断、そして種類に合った治療を選ぶことが何よりも大切です。
老人性色素斑の治療
レーザー治療がもっとも効果的です[1][2]。アレキサンドライトレーザー、ルビーレーザー(Qスイッチ・ピコ秒)など、メラニンの黒い色に反応するレーザーを使って、シミの細胞をピンポイントに破壊します。
1〜2回の照射で大きく改善することが多いですが、サイズや色の濃さによっては数回照射することもあります。
肝斑の治療
肝斑の治療は、内服薬と外用薬の組み合わせが基本です[2][3]。
トラネキサム酸内服
肝斑治療の中心となる薬です。メラニンを作るメラノサイトの活性化を抑え、肥満細胞を介した炎症性のメラニン産生も抑える作用があります[5]。通常2〜3ヶ月の内服で効果を判定します。
ハイドロキノン外用
メラニンの合成を直接抑える美白剤で、長く肝斑治療のゴールドスタンダードとされてきました[6]。3〜5%の濃度を用いるのが一般的です。
副作用としてはかぶれや、まれに白斑(部分的な色抜け)があります。
トレチノイン外用
ビタミンA誘導体で、表皮のターンオーバーを促進してメラニンの排出を助けます[7]。
ハイドロキノンと併用することもあります。副作用として赤みや皮むけが出やすいため、
医師の指導のもとで使うことが大切です。
ビタミンC(外用・内服)
抗酸化作用とチロシナーゼ(メラニンを作る酵素)阻害作用があり、メラニン生成の抑制を期待して併用されます[8]。ただしシミ単独に対する強いエビデンスは限定的で、補助療法として位置づけられます。
ビタミンE内服
抗酸化作用を持ち、ビタミンCとの併用で相乗効果が期待されるとして補助療法として併用されることがあります。
レーザートーニング
非常に弱い出力でレーザーを照射する方法で、肝斑にも使える低出力治療として広まりました。効果には個人差があり、やりすぎると白抜け(色素脱失)のリスクがあるため、経験豊富な医師のもとで行うことが大切です[2]。
そばかすの治療
フォトフェイシャル(IPL)やルビーレーザー、アレキサンドライトレーザーなど(Qスイッチ・ピコ秒)が有効です。ただし遺伝的な要因が大きいため、治療後も紫外線対策を怠ると再発しやすい点に注意が必要です。
炎症後色素沈着の治療
基本は紫外線対策と保湿で自然な回復を待つことです[16]。回復を早めるために、ハイドロキノンやビタミンC誘導体の外用、トラネキサム酸内服を併用することがあります[16][18]。
レーザー治療はかえって悪化させる可能性があるため、通常は使いませんが、レーザートーニングを慎重に使用するケースもあります。
ADMの治療
ADMはメラノサイトが皮膚の奥の方の真皮にあるため、外用薬は効きにくく、ルビーレーザーやアレキサンドライトレーザーなど(Qスイッチ・ピコ秒)のスポット照射が必要です[12][13]。最近の研究では、730nmや1064nmのピコ秒レーザーを用いて複数回(多くは3回以上)の治療で改善が得られると報告されています[13]。
ただし炎症後色素沈着のリスクがあるため、照射条件の調整と治療後のスキンケア・遮光が重要です。
日常でできるシミ対策
日焼け止めが最強の予防

すべてのシミに共通して、もっとも大切なのが紫外線対策です[17][18][19]。SPF30以上・PA+++以上の日焼け止めを、毎朝たっぷり塗ること。実際に肌に使用した時の効果は、表記の数値よりも低めになることが多いので、できればSPF50+・PA++++のものを使うことをお勧めします。量の目安は顔全体でクリームタイプなら真珠2個分、液体タイプなら1円玉2枚分です。2〜3時間おきの塗り直しが理想ですが、難しい場合はスプレータイプやパウダータイプでの重ね塗りでも効果があります。
最近の研究では、紫外線(UVA・UVB)だけでなく可視光や近赤外線も色素沈着を悪化させることが分かってきており[17]、特に肝斑やADMがある方は、可視光まで防ぐ酸化亜鉛・酸化チタン配合の日焼け止め(ノンケミカル・ミネラルタイプ)や、酸化鉄を含むトーンアップ系の日焼け止めを選ぶと、より効果的です[18][19]。
摩擦を避ける
肝斑は摩擦で悪化することが知られています[3][4]。洗顔やスキンケアのとき、ゴシゴシこすらないこと。クレンジングはやさしく、洗顔料はたっぷり泡立てて使いましょう。タオルで拭くときもそっと押さえるように。マッサージや美顔器も、肝斑がある方には逆効果になることがあります。
ビタミンCの活用
ビタミンCにはメラニンの生成を抑える作用と、酸化ストレスから肌を守る作用があります[8]。外用(ビタミンC誘導体配合の化粧水や美容液)と内服(サプリメント等)の両方からアプローチするのも一つの選択肢です。ただし、化粧品単独での効果には限界があるため、シミがすでに目立つ場合は皮膚科での治療と組み合わせることをおすすめします。
ターンオーバーの正常化
睡眠不足やストレスは肌の新陳代謝(ターンオーバー)を乱し、メラニンの排出を遅らせます。「忙しいから仕方ない」と思いがちですが、6時間以上の睡眠を確保するだけでも肌の回復力は変わってきますよ。
こんなときは皮膚科を受診しよう
・シミが急に大きくなった、色が変わった、形がいびつ(悪性腫瘍の可能性)
・自分のシミの種類がわからない
・市販の美白化粧品を3ヶ月以上使っても変化がない
・レーザー治療を検討しているが、肝斑かどうか自信がない
・シミの周りがかゆい、盛り上がっている
特に「急に変化したシミ」は、日光角化症(にっこうかくかしょう)や悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)(メラノーマ)などの可能性もゼロではありません。早めの受診をおすすめします。
まとめ
シミには老人性色素斑、肝斑、そばかす、炎症後色素沈着、ADMなど複数の種類があり、それぞれ原因も治療法も異なります。特に女性に多い肝斑は、レーザーで悪化するリスクがあり[2]、ADMは外用や内服が効きにくいため[12]、まずは正確な診断が大切です。
治療の選択肢は、レーザー・内服薬・外用薬・光治療と広がっていますが、どのシミにも共通する最も大切な対策は「毎日の日焼け止め」です。ずぼらでもこれだけは続けてくださいね。
参考文献
[1] Plensdorf S, Livieratos M, Dada N. Pigmentation Disorders: Diagnosis and Management. Am Fam Physician. 2017;96(12):797-804.
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